こんな寂しい 山家(やまが)でよけりゃ
どうぞお泊り あそばせな
旅に迷うて 宿乞(やどこ)う人を
見れば凛々しい 墨染(すみぞ)め衣
鳴くなムササビ この血がさわぐ
谷の夜風よ 鎮めておくれ
飛騨の山々 今宵は月夜
世捨て身を捨て 私の乳房(むね)で
いっそ幻想(ゆめ)みて くださいな
背中(せな)を流せば 黒髪さえも
愛が欲しいと あなたに絡む
おんな盛りを もののけ姫と
うとむ憂(う)き世(よ)を 閉ざしておくれ
天羽峠(あもうとうげ)に 渦巻く霧よ
契り交(か)わせば 獣に化(か)わる
どうぞお覚悟 なさりませ
やぶれ行燈(あんどん) 油がないて
鬼が帯解(おびと)く 煩悩(ぼんのう)が燃える
末は聖(ひじり)と呼ばれる人を
滝のしぶきよ 浄(きよ)めておくれ
飛騨の奥山 今宵は月夜