1.
明治生まれの爺ちゃんは 粋で頑固で酒飲みで
笑うと金歯が光ってた なまはげみたいな顔だった
みんなは嫌っていたけど 何故だか爺ちゃん好きだった
時々僕の手を引いて 知らない女(ひと)の家に行く
そこには綺麗な女(ひと)がいて 優しいその目が好きだった
2.
其処にいる時爺ちゃんは わっはっはわっはっはとよく笑う
家にいる時と違う男(ひと) 大黒様の顔だった
誰にも喋っちゃいけない 男と男の約束さ
着物が似合うその女(ひと)は いつもにこにこしてたけど
ある時寂しい眼差しで 夕焼けの空を見つめてた
3.
冬と春との真ん中で 誰に別れを告げたのか
名残桜のひとひらが 黒い着物に絡みつく
男と女の定めは 生まれて愛して死んでゆく
過ぎ行く春を惜しむ様に 金歯の笑顔思い出す
花弁の様な雪が舞い 綿雪の様な花が散る